新たなビジネス
ファミコンブームは様々なものを生み出しましたがなかでも大きなものが中古ソフトを扱うファミコンショップだと思います
それまでにも古本屋や中古CD屋はあったのですが小学生で漫画を売ったりするヤツはほとんどいませんでした
この中古ソフトの売買は金の無いファミコンキッズにとっては画期的なシステムでした
子供が元々飽きっぽいのに加えてメーカーのクソゲーの乱造で誰の家にも埃をかぶったソフトが沢山ありました
これがお金になるのですからこんなに有難い事はありません
もちろん当時から子供が売る事はできませんでした
親と一緒に行くか親に許諾書を貰うかでした
逆言えば許諾書さえあれば小学生でも自由にゲームを売れたのです
最近そこまで緩い店はあまりないでしょう
今調べるとツタヤもブックオフも18歳未満の買取は不可です
この許諾書は各店が適当な紙にコピーして店の片隅に置いてありました
これを持って帰って親に署名捺印してもらう訳です
後にファミコンショップのチラシの裏には買取表なるものが印刷され細かい文字のタイトルと数字が並んでいました

そしてその下にはご丁寧に切り取り線がかかれた買取許諾書が
この買取ですが1つハードルがあります
子供にとっては遊ばなくなったガラクタですが親にしてみればつい先月買い与えた玩具です
一ヶ月もしないうちに飽きたから売るというのはどういう事だという訳です
僕達にしてみればこんなクソゲーは一ヶ月でも長すぎるというのに・・・親はクソゲーの酷さを知らないのです
そこで上手く冷却期間を取りながら売る訳ですが取り過ぎるのも危険です
下手に買取金額が1万円なんかになると親から貯金に回すと強制的に没収されるのです
冷却期間をあけつつも為過ぎないという微妙な調整が必要だったのです
しかしファミコンブームによるクソゲーの乱造はそれを許しません
巧妙な宣伝と粗末な内容でクソゲーは増える一方
こうなると良からぬことを考えます
偽造文書です 印鑑はどうにでもなるので親の署名を真似て偽の許諾書を作成するのです
もちろんこれは条例違反です
小学生の署名ではバレて買取拒否もありますがバレたところで親に連絡される訳でもないし店員が「コラ」というくらいでした
そもそも店員も分かってて流してた部分も多いでしょう 緩い時代です
初期は個人経営が多かったので緩い厳しいがあり クソガキは緩い店に行っては売っていました
また今のようにネットも無い時代なので買取価格にばらつきがありこの店で買った価格よりよその買取価格の方が高いなんて事もあり売って儲かったなんて言ってるヤツがいました
さすがにそんな事はまれでどこかの店で価格改定があったりセールの時だけですけどね
それでも数百円の儲けが出るというのは子供には大きな事でした
この辺まではまだかわいげもありますがそうでない問題もありました
借りパクです
それまでは借りて返さないのが借りパクでしたが借りて売ってしまうというシャレにならない事が起き始めました
ボクの友達にカズキというヤツがいました
大人しく内向的なコでした そういうコに限ってゲームやおもちゃを沢山買い与えられていた印象です
クラス替えがあってからあまり遊ばなくなってましたが別の友達(ヨシオ)と久しぶりに遊びに行こうという事になりカズキの家に行きました
当時のお決まりで皆でゲームをやったのですが以前あったスーパーマリオ3がありません
どうしたのか聞くとAに貸したまま返ってこないとのこと
マリオ3だけじゃなく他のソフト数点も貸しっぱなしだとか・・
カズキはお人好しですがボクとヨシオはすぐ察しました
ヨシオは今からAを問い詰めに行こうとボクに言いました
義憤に駆られた行動なのかただの暇つぶしか揉め事大好きなヨシオの事だから楽しんでいただけかボクには分かりません
ただそこに怒りがあった事は間違いありません
2人でAの家に行きAを連れ出し近くの公園に行きました
カズキのゲームを返せというとAは親戚に貸したから今は無いと言います
Aも最初は虚勢を張っていましたが非があるあ事を重々承知しているだけに普段の威勢がありません
僕もヨシオもそれが嘘だという事は分かりきっていながら意地悪な追いつめ方をしたと思います
ヨシオは「明日この時間にここに持ってこい 持ってこないと殴るぞ」
とどストレートに脅しAもそれを了承しました
ボクは絶対無理だからヨシオに殴られるだろうなぁ・・と思いました
ところが翌日Aはソフトを持ってきました
間違いなくどこかで買って来て埋め合わせたのです
ソフトの数が足らないのはお小遣いが足らなかったのでしょう
Aは他のソフトは親戚がまだやっている、返してもらったらすぐに返すと言いました
もうその時にはAは泣いていました
ヨシオは殴る気満々でしたがヨシオは謎のヒーロー像というか歪んだ正義感というかよくわからないものを持っていたので泣かした相手に手を上げる事はなく後日また取りに行くと言ってその場はおさまりました
後日Aは借りたものを少し弁済しましたがお小遣いが足らなかったのか自分のソフトを差し出しこの件は終わりました
今でも覚えているのがAの家に行った時のお母さんの対応
なんとなく普段と違う事を察したのでしょう
送り出す時は何とも言えない表情でした
クラス変えの前まではAも時々遊ぶ仲だったのです
Aの家に行った時はお菓子やジュースを出してもらったり・・
それだけに嫌な気持ちでした
これがただのケンカだったらまた仲直りできたんじゃないかと思いますが理由が理由だけに疎遠になってしまいました
何とも後味の悪い話です